この公園の価値にきづいたのは20代前半の頃でした。その頃は、ニッケ社宅や印南工場、別府のあかがね御殿と時間をつくっては歴史的な物を見学にいき、加古川キリスト教会の解体廃品をいただいたり、用水路をカヌーでこぎ抜けたりと必死で加古川のいいところを探し回っていました。OAAのあるこの場所も「あの建物何なんだろう?」いい場所にあるなぁと見学した場所のひとつです。
それから数年を経て2010年より日岡で暮らし始め10年が過ぎ、改めて日岡山公園の扱いがもったいないと強く感じてきました。仕事柄、様々な国の建築や公園、街並みをみてきましたが、世界の著名な公園に匹敵するいい公園になる素材が日岡山にはありました。「加古川の特別な場所として価値を創出できる」と感じ、本腰を入れて市や県に企画をプレゼンしたのち、あたらしい学びの場をプロデュースする事になりました。
「ロンドンやローマのような、ずっとかわらない美しい街をつくりたい。」私にはそんな夢があります。20代に海外に頻繁に身を置いていた私は魅力について考えました。なぜこんなに気分がよく、美しく、魅力的なのか?それは自然や文化が街を作ってきたからだとわかりました。
ヨーロッパの街は、自然の素材が人工的に時間をかけて作られており、その文化を、教育の一環とし大切に法律で守っています。普遍的な魅力を見いだし大事にされている街は、美の強度があります。海外旅行にわれわれがでかけるのは、そんな暮らしの世界観に浸り、生活文化をたのしむ為というのが大きな旅の理由です。日本では、街があらたに何かを作ると一過性の箱物や、土地や自然を無視したものばかりが目につきます。便利かもしれませんが、魅力的ではなく一過性の物です。そういう場作りはしたくありません。
今の加古川に、強度のある景観はほとんどありません。しかし、日岡山にある古墳や森には、未来につなぐ価値ある「美」が備わっています。この敷地のプロデュースを手がけるにあたり、ここから望む景色を最重要視したリノベーションをおこないました。ON THE HILLは「自然や文化に価値を感じる」青少年教育を目指しています。教育において、最も重要なことは「憧れ」だと考えています。学校教育を頭でっかちに強制しても、人は学びを形にできません。脳に知識を押し込む以外に、とても大事なことが経験にはあるからです。学問だけが学びでではなく、様々な生活の営みや自然環境に教育は存在します。未来を担う大人を育てるには「憧れ」をもってもらうには、まず、大人の我々が自分を棚に上げることなく、この場所で「たのしそうに」「かっこよく」生活し、歴史を知り、環境を知り、仕事をする必要があります。「つまらなそうに」「かっこ悪い」大人に子供は憧れません。自分がしていないことを子供に押しつける教育の時代は終わりました。
我々がまず、「自然を使い楽しみ」、「カルチャーを生み出し楽しむ」この環境で誇り高く生活や仕事をたのしむ子供達の憧れとなりたい。そして「知識」と「経験」の両方で学べる場所を提供する事が未来の大人、社会、街を作る方法だと考えています。ON THE HILLはそういった、街作りの「礎」となる教育と体験を「憧れとともに」学ぶ場所、そして仲間と集う空間を創出します。